第2回日本ダンス研究会 開催報告

はじめに

2022年11月26日に、オンラインにて第2回日本ダンス研究会を開催した。全国より75名がオンライン参加(うち勉強会参加は58名)し、様々な分野の発表を行い、 活発に議論した。

発表および議論

以下のような発表枠を用意し、議論を行った。 招待講演1件、一般発表10件、勉強会1件の発表があった。

招待講演:45分 (質疑含む)
一般発表:発表12分+質疑3分
勉強会:60分

発表一覧

招待講演:舞踊のためのシステムデザイン:バレエの記録・再現からコンテンポラリーダンスの創作支援まで

振付支援システム「Body-part Motion Synthesis System」やバレエ古典作品の3Dコンテンツ「Virtual Dance Theater」など、作成されたさまざまなシステムを紹介した。また、それらシステムを活用した舞台位パフォーマンス実践作品についても多数紹介した。

一般発表:深層学習を利用したダンスのキレ採点システムの開発

動画共有サイトの人気ジャンルの一つに「踊ってみた動画」がある。ダンス動画に限らず、コメント欄を利用した視聴者反応は盛り上がりの大きな要素となっており、Pops ダンスの投稿動画では「キレッキレ」等のコメントで盛り上がることが少なくない。我々は「踊ってみた動画」の骨格情報とコメントとして寄せられた「キレ」に関する情報を教師データとして利用し、深層学習によって「踊ってみた動画」のキレ採点を実施するシステムの開発を進めている。

一般発表:フリースタイルバスケットボールバトルにおける「待つ様子」から「かっこよさ」を検討する

パフォーマンス競技の審査員はいかにして「かっこよさ」を判断しているのだろうか。本研究では「かっこよさ」を「評価者が持つ特定の規範との適合度合い」と定義し、フリースタイルバスケットボール(以下FB)バトルにおけるターン切り替え前後の様子から、印象「かっこよさ」と「巧みさ」を比較している。

一般発表:複数人が参加するオンラインダンスにおけるインタフェースの影響に関する調査

オンラインダンスレッスンにおける、レッスン環境のインタフェースがダンス視聴に与える影響について調査している。オンラインでは、通信環境の影響により音楽と動作の間に遅延が生じる。この遅延により、オンラインで遠隔地にいる複数人のダンサが同時に踊る場合、音楽とタイミングを合わせて踊ることができず,ダンサ同士の動きが揃っていないように見えてしまう、本研究では、遅延を含むダンス映像において、インタフェースの違いにより、ダンスの見やすさ,タイミングの合わせやすさ、音楽とのずれの認知にどのような影響があるのか調査した。

一般発表:内受容感覚の正確性がリズムへの同調運動に与える影響

我々ヒトは日常的にダンスなどのリズムへの同調運動を行う。特に、プロの音楽家やダンサーはそのようなリズムへの同調運動能力が高く、また非音楽家や非ダンサーよりも彼らは内受容感覚の正確性(IAcc)が高いことが個別の研究にて報告されている。 そこで本研究では、内受容感覚の正確性(IAcc)の高い被験者はリズムへの同調運動能力が高いという仮説を立て実験を行った。

一般発表:AI を用いたストリートダンスのムーブ生成およびデータ空間の獲得に向けた試み

Variational Auto-Encoder (VAE) と呼ばれる AI モデルを用いたストリートダンスのムーブ生成およびダンスムーブのデータ空間の獲得に向けた実験結果を報告した。

一般発表:阿波踊りにみられる企業連の多様な参与実態とそれを支える要因-三原やっさ踊りとの比較を通じて-

徳島市の阿波踊りでは近年、運営を巡る混乱が続いており、安定的な運営のためには担い手の現状を把握することが求められている。 本研究の目的は阿波踊りの企業連の活動実態の詳細を明らかにし、三原やっさ踊りの企業チームとの比較によってその特徴を示すことである。

一般発表:バレエのグランジュッテにおける2次元映像のデータによる動作評価方法の検証

本研究はクラシックバレエにおけるパフォーマンス向上のためにスタジオや舞台上で簡易的に動作解析し、指導に活用できるシステム構築を目指している。そのために2次元映像のデータから動作評価が可能か否か検証する必要がある。今回バレエのグランジュッテ動作についてAIで骨格検出ができるPose-capを使用して下肢三関節の身体角度を算出し、3次元動作データと比較を行った。そしてグランジュッテ動作を対象にAIソフトウェアを用いた2次元動作解析を3次元動作解析と比較して計測の妥当性を検討することを研究目的とした。

一般発表:パフォーマーの表現の限界を超える、リアルタイム映像表現に関する取り組み

体を使ったダンスや道具を使ったジャグリングなどのライブパフォーマンスについて、パフォーマー(ダンサーなどパフォーマンスをする人)を魅力的に演出するための様々な表現が存在している。我々はそういったライブパフォーマンスに関するパフォーマーの表現を、XR(AR/VR)と呼ばれる技術で拡張するといったことを目的に活動している。

一般発表:ハウスダンス世界チャンピオンが持つ「軸」に関する身体知

ストリートダンスの指導現場において、指導者は「軸」という言葉を多用して踊りの助言や評価を行うが、初学者はこれを理解できないことが多い。これは軸という言葉が指す身体感覚が、熟達化により身につけられる身体知だからであると考えられる。本研究では、ハウスダンス世界チャンピオンに対して半構造化インタビューを実施し、軸に関する主観を調査した。

一般発表:岩手の郷土芸能「鬼剣舞」の練習支援に関する研究

日本のさまざまな地域で古くから民俗芸能が伝承されているが、発表者の出身地である岩手県北上市では「鬼剣舞(おにけんばい)」と呼ばれる芸能が伝承されている。鬼剣舞には、他の踊りには見られない特徴的な動作がいくつかある。その代表的な例として、首を大きく振る「ザイを切る」と呼ばれる動作や、扇を回す動作、反閇と呼ばれる大地を踏みしめる動作が挙げられる。それらの動作の習得には多くの練習を要する。本研究では、特徴的な動作に着目した鬼剣舞の練習を支援するシステムを開発する。画像認識やモーションセンサを用いて鬼剣舞の踊りの特徴を抽出し、分析、練習者にフィードバックするシステムの開発を目指す。

勉強会:ダンス解析勉強会 OpenPose

OpenPoseを利用したことがない方々を対象として、入力したダンス動作が参考となるダンス動作に比べてどれだけ似ているかを定量的な数値で算出することを目指して、OpenPoseの長所・短所や実際の処理・出力、データ収録・入手時の注意点について紹介した。

おわりに

本研究会ではScrapboxを活用した議論を実施した。結果として、参加者の皆様から貴重なご意見やご感想をいただくことができ、有意義な会合となった。また、今回の開催を通じて、参加者の皆さまと新たな知見を共有し合うことができ、研究会の活動をさらに深めることができた。

謝辞

招待講演を快く引き受けてくださいました龍谷大学 曽我 麻佐子 様にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。また、参加していただいた皆様、ご参加いただきありがとうございました。

来年度も日本ダンス研究会を開催する予定です。下記のWebページにて随時情報を更新しています。多くの方のご参加をお待ちしております。

https://jsds.info/

幹事

開催情報

開催日時:
2022年11月26日(土) 11:00-18:00

主催者:
日本ダンス研究会 幹事団

参加者の属性、参加人数:
大学生・大学院生、大学関係者、企業関係者 75名