第4回日本ダンス研究会 開催報告

はじめに

2024年10月26日(土)に、お茶の水女子大学共通講義棟1号館にて第4回日本ダンス研究会が開催された。総勢66名が参加し、8件の一般口頭発表と7件のポスター発表、三浦哲都氏(早稲田大学)による招待講演、そして「企業とダンス」というテーマでオープンディスカッションが行われた。

発表および議論

一般口頭発表では、永井玉藻氏(桐朋学園大学音楽学部)らが、音楽性に関連したバレエ指導について熟練指導者と新人指導者の比較結果を報告した。豊永洵子氏(武庫川女子大学)からはダンスの鑑賞学習の必要性および具体的方法として対話型鑑賞が提案された。江口真優氏(尼崎市立難波小学校・早稲田大学人間総合研究センター)らは、ポール・ヴァレリーの論をもとに、踊り手に行為を促す音楽の仕掛けを音楽性として解釈できることを議論した。

夏目幸奈氏(NTT コミュニケーション科学基礎研究所)らは、感情状態によって変化する身体の運動特徴について検討し、喜びと悲しみの感情を惹起する音楽を聴いたダンサーの動きから、各部位の加速度および姿勢に感情による違いが現れることを報告した。栗原勇人氏(早稲田大学)は、対人のリズム同期における脳波の同期現象が知り合いよりも初対面の二人の方で強く見られることを報告した。山口幹太氏(大阪工業大学)らは、フォースプレート、筋電図、小型圧力センサーを用いたブレイキンの基礎技術獲得のための定量的フィードバックシステムを紹介した。頼定優花氏(東京都市大学大学院)らからは、ダンスの身体知獲得支援アプリケーション開発について、ボックスステップを例に取り組んだ成果が報告された。加畑健志氏(有限会社アドリブ)らは、誰でもダンス鑑賞を楽しめるように視覚言語モデルを活用した「動的解説システム」を提案した。

三浦哲都氏(早稲田大学)による招待講演では、ご自身のダンス研究の変遷および現在の量的・質的に終わらない現場に根ざした研究方略、そしてその事例として様々な方との共同研究をご紹介いただいた。その中で辿り着いた「適切な”分析の単位”は研究者を幸せにする」という言葉が印象的であった。

ポスター発表では、対面での交流が活発な議論を促進した。参加者は、研究成果をポスター形式で展示し、それについての質問や意見交換が行われた。

最後に企業とダンスというテーマでオープンディスカッションが行われた。

八幡裕也氏(エイベックス株式会社)よりエイベックスの事業紹介および課題についてお話いただき、企業とダンスの研究事例として、幹事メンバーの土田修平氏(お茶の水女子大学)、清水大地氏(神戸大学)、中村まい氏(お茶の水女子大学)より、社会や企業とのダンス研究の事例を紹介をした。その後、ダンス文化の普及などの課題について企業および研究による課題解決について参加者と一緒に議論した。

集合写真

情報交換会には26名が参加し、各自の研究や共同研究の可能性などを議論した。

おわりに

今回は2回目の対面開催だったが、準備が前回よりも大変であった。しかし、研究会が始まり参加者の皆さんが発表後も議論をしていたり、交流している姿をみると、報われる気持ちであった。今回から会場を準備するために参加費を徴収することになり、参加者が減少すると予想していたが、その予想は見事に外れ、結果的に会場の人数制限のために参加申し込みを途中で打ち切らざるをえなかった。このため参加できなかった方々には大変申し訳ない気持ちである。今回の反省を踏まえて次回開催する際にはより広い会場を準備したいと思う。

謝辞

発表者・聴講者の皆様、ご参加いただきありがとうございました。日本ダンス研究会は小さな研究会ですが、参加者が密に議論できる場であり、今後も新しいアイデアが生まれる場、また明日から研究を頑張ろうと思える場になればとても嬉しいです。次回も是非ご参加いただき、可能であれば研究発表をしていただければ幸いです。研究会の対面開催は来年度になると思いますが、PodcastやXによるダンス研究に関する情報発信は随時行っています。また論文を発表された際は日本ダンス研究会のSNSでも発信しますのでご連絡ください。

最後に、今回の研究会において貴重な招待講演をしていただいた三浦哲都氏(早稲田大学)に心より感謝申し上げます。また、サポートメンバーである栗原勇人氏(早稲田大学)、黒丸愛美氏(東京科学大学)、松岡(初田)響子氏(神戸大学)には会場準備、受付、撮影、買い出し、そして研究発表に至るまで様々な面で研究会開催をサポートしていただきました。この場をかりて、改めて感謝申し上げます。

https://jsds.info/

実行委員

実行委員長:宮田紘平(理化学研究所)
ローカル・配信:河野 由(大東分科大学)
動画・音声編集:中村まい(お茶の水女子大学)
Google Form/CFP:清水大地(神戸大学)
Web:土田修平(お茶の水女子大学)

サポートメンバー:
栗原勇人(早稲田大学)
黒丸愛美(東京科学大学)
松岡(初田)響子(神戸大学)

開催情報

開催日時:
2024年10月26日(土) 10:00-17:00

主催:
日本ダンス研究会 実行委員会

参加者の属性:

学生 39.5%(博士課程 6.1%, 修士課程 15.2%, 学部 18.2%)、研究者 40.9%、その他(企業の方など) 19.7%


参加者の専門分野一覧:

舞踊学、社会学、音声情報処理、HCI、バレエ・フォークダンス、自然言語処理、数式処理、情報工学、組込み開発、スポーツ科学、東洋的身体技法、身心息調整法、芸術学、AI、社交ダンス、熟達、審美性、スポーツバイオメカニクス、認知神経科学、フラメンコのバイオメカニクス、心理学、ダンス、アイソレーション、チェアー、MEMS触覚センサ、フィードバック、練習支援システム、アルゼンチンタンゴ、声楽、言語学、認知科学、身体性科学、身体知、人工知能、強化学習、コーチング学、スポーツ哲学、アーティスティックスポーツ、新体操、体育科教育、スポーツ心理学、舞踊教育、アートマネジメント、映像身体学、クラシックバレエ、ダンス医科学、Human Computer Interaction、スポーツテック、舞踊、ペアダンスにおける力学的メカニズムの解析、身体協調、運動機能、ジャズの即興、協働活動、ロボティクス、ラテンダンス、舞台芸術、音楽学、舞踊史学、臨床舞踊学、ソマティクス、インタラクティブアート、身体運動科学、リンディホップ、身体認知、運動学習、ロボット工学、能の身体知、重力理論、物理学的分析、社会文化心理学